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英語ライティングのコツ 8:利益相反はありますか

日本の大学、とくに医学部や工学部には、企業からの寄付によって運営される「寄付講座」があります。国内ではごく普通の制度で、所属する研究者にとっては日常の研究環境の一部にすぎません。ところが、その寄付元の企業に関連する製品や技術を評価する論文を書くとき、この関係は国際ジャーナルにとって典型的な利益相反(COI)にあたります。基準はシンプルです。査読者が後からその関係を知ったときに、驚かれそうか、気まずく感じそうかを考えてください。答えがイエスなら、開示してください。

「国内では普通」が一番見落とされやすい

寄付講座や産学連携の共同研究は、日本の大学運営の中で広く制度化されており、悪いことでも珍しいことでもありません。だからこそ、その研究者自身にとっては「わざわざ書くほどのことだろうか」という感覚が働きやすく、開示が漏れる原因になります。しかし国際ジャーナルの視点では、資金提供元と研究対象が重なっている時点で、読者が結果を評価するうえで知っておくべき情報になります。開示は「疑いをかけられている」ということではなく、「この関係を知ったうえで、読者自身に判断してもらう」ための情報提供です。

寄付講座以外にも、次のような場面でCOIが発生します。

判断に迷ったときのテスト

明らかなケース(製薬企業が自社製品の治験に資金提供している、など)で迷うことはあまりありません。難しいのは、企業からの無償サンプル提供、共著者が昨年自分の科研費申請を審査した、配偶者が競合するラボに所属している、といった、グレーゾーンに見える案件です。ここで使えるテストは一つだけです。論文が公開されたあとに、その関係を査読者や読者が独自に知ったとしたら、気まずく見えるか、意外に思われるか。イエスなら開示してください。何か不正をしたからではなく、その判断を読者に代わって下さないためです。

AI利用の開示は、COIの開示とは別物

もう一つ、混同されやすい項目があります。原稿の執筆や英訳、図表の作成に生成AIを利用した場合、多くのジャーナルは近年、それを利益相反ではなく別の独立した開示事項として求め始めています。COIが「結果の解釈が何かに歪められていないか」を問う項目であるのに対し、AI利用の開示は「この原稿がどう作られたか」を問う、性質の異なる項目です。この二つを同じ欄に書いてしまったり、逆にCOIの欄にAI利用のことを書けば十分だと思い込んで、専用の開示欄を見落としたりするケースがあります。どちらの開示が必要か、どこまで具体的に書く必要があるかは、ジャーナルや出版社によって方針が大きく異なり、しかも現在進行形で更新され続けている分野です。この記事のような一般的な解説で断定することはできないので、投稿先の最新の「Instructions for Authors」で、COIとは別に「AI」「artificial intelligence」「generative AI」といった語で検索し、両方の欄を見落としなく埋めることをおすすめします。

推測せず、投稿先の最新の方針を確認する

どこまで詳しく書くべきか、どんな様式で提出するかは、ジャーナルや出版社によって異なり、しかも変わり続けます。数年前は「利益相反はありません」の一行で済んでいたジャーナルが、いまでは著者全員分の様式付き開示を求めていることもあります。頼れるのは投稿先自身の最新の指示だけです。

  1. 「Instructions for Authors」のページで「conflict of interest」または「competing interests」を検索してください。見出しの立て方がジャーナルごとに違うため、想定外の場所に埋もれていることがあります。
  2. 投稿システム自体も確認してください。アップロードの過程で初めて、様式化されたCOI開示フォームが求められることがあります。

方針が読み取れない場合は、編集部に直接メールで確認してください。ごく普通の質問として扱われます。

開示文の実例

"The authors declare no conflict of interest."

"This work was supported by an endowed chair funded by [Company]. The funder had no role in the design, analysis, or interpretation of the data."

二つ目の例は、関係を具体的に名指ししたうえで、資金提供元が結果の設計や解釈に関与していないことも明記しています。この一文があるかどうかで、読者の受け取り方は大きく変わります。あいまいな書き方は、何も隠していなくても、隠しているように読まれてしまいます。

開示文の言葉選びを含め、提出前の原稿全体を見てほしい場合は、英文校正サービスで確認することができます。査読関連のチェックリスト全体は、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の該当章(英語)でも扱っています。

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