日本語で読む:Introductionで使う現在完了形と過去形
現在完了形は、中学・高校の英文法でかなりしっかり練習した文法項目のはずです。継続・完了・経験・結果という4つの用法を覚えた記憶がある方も多いでしょう。それなのに、いざ英語論文のIntroductionを書くと、現在完了形と過去形のどちらを使うべきか分からなくなる。これは英語力の後退ではなく、学校で習った4用法の枠組みに、この場面がそもそも含まれていないことが原因です。
結論から言うと、テストは一つだけです。研究者名を挙げられる具体的な研究の話なら過去形、名前を挙げられない分野全体の傾向の話なら現在完了形。"The contribution of agricultural production to greenhouse gas has long been debated" が正しく、"was long debated" ではありません。誰か一人が議論して終わった話ではなく、今も続いている議論だからです。
中高の授業では、現在完了形を「have + 過去分詞」という形と、継続・完了・経験・結果という意味の4分類で教わります。この分類はもちろん正しいのですが、論文のIntroductionで実際に問われるのは、この4分類とは違う軸です。「これは特定の一つの研究の話か、それとも分野全体の、まだ決着していない話か」。この判断は、中高で覚えた用法一覧をいくら眺めても出てきません。だからこそ、文法自体は正確に運用できる書き手でも、この場面だけはつまずきやすいのです。
具体的な研究であれば、著者名も、多くの場合は年代も分かります。"Smith et al. conducted a two-year field experiment in 2009 and 2010 in rice paddies…" のように、実験には終わりがあり、特定できるので、過去形がふさわしくなります。ここで "have conducted" とは書きません。
一方、分野全体の傾向を要約するときは、その議論がまだ終わっていないことが多いので、現在完了形のほうが実情に合います。"The contribution of agricultural production to greenhouse gas has long been debated." 特定の著者名がなく、終わった様子もない。この二つがそろえば現在完了形のサインです。「誰か特定の人」の話ができるようになった時点で、たいてい「いつ」の話もできるようになり、そこで初めて過去形が正直な選択になります。
分野全体の傾向でなくても現在完了形が勝つ場面が一つあります。「まだ分かっていないこと」を述べる文です。"Whether reducing potato crops is a viable strategy for reducing emissions has not yet been determined" は自然に読めますが、"was not determined" にすると、まるで誰かが一度試みて諦めたかのような響きになります。研究の空白を指摘する文では、現在完了形のほうがその空白の「今も空いたままである」感覚を正しく伝えます。
日本語のIntroductionをAI翻訳・生成ツールで英語化すると、この現在完了形と過去形の判断は、人間が翻訳するとき以上に不安定になりがちです。AIは「これは名前を出せる一研究の話か、名前の出せない分野全体の話か」を、文脈から都度推測するしかなく、しかも長い文書の前半と後半で同じ判断基準を一貫して保つ保証がありません。同じ「まだ議論が続いている」内容が、ある段落では現在完了形、別の段落では過去形になっていることがあり、しかもどちらの文も単独で読めば文法的には正しいため、見落とされがちです。AIが訳したIntroductionほど、この記事の一つのテスト(名前が出せるか)を一文ずつ人間の目で当てはめ直す価値があります。
"researchers have" や "it has been shown" で始まる文をすべて洗い出し、「これは誰の話か、名前を出せるか」を自問してください。名前が出せて、しかも年代まで添えられるなら過去形に。「複数の人が、何年もかけて、しかも今も続いている」というのが正直な答えなら、現在完了形のままにしてください。この一つの問いで、たいていのケースは機械的に判断できます。
これはIntroductionの中でも見つけにくい部類の問題です。自分では意味が分かっているぶん、時制のずれには気づきにくいものです。Introduction全体をこの視点で確認してほしい場合は、アカデミック英文校正レベル3で確認できます。AIで翻訳・下書きした原稿は、単発の誤りというより判断基準そのものが揺れていることが多いため、アカデミック英文校正リライトで構成から見直すほうが向いている場合があります。Introductionの時制の使い分けをまとめて扱った章が、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の該当章(英語)にもあります。
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