日本語で「このデータセットは3つの病院の画像から構成される」と書くとき、頭の中では一つの表現しか使っていません。ところが英語には、この一つの日本語表現に対応する動詞が少なくとも三つあり、しかもそれぞれ意味が違います。リストが全部かどうかを保証したいなら consist of / comprise / be composed of、一部にすぎないと分かっているなら include を使う。これが結論です。
この区別が難しいのは、能力の問題ではなく、日本語の「〜から構成される」「〜を含む」が、英語ほどきっぱりと「全部」と「一部」を分けていないからです。日本語では文脈で判断できてしまう場面でも、英語の読者は動詞そのものから完全性を判断します。
Consist of、comprise、be composed of、constitute、make up はすべて「これで全部」という完全性を主張します。"North America consists of three countries: the USA, Canada, and Mexico." と書いたら、それで全部です。メキシコを書き忘れていたら、それは「言葉足らず」ではなく「事実として誤り」になります。
一方、include と contain は「これ以外にもある」ことを前提にした表現です。"Asia includes China, Japan, and Korea." は、アジアに他の国が45か国以上あることを知っていてもなお正しい文です。日本語の「アジアには中国、日本、韓国などが含まれる」の「など」に相当する情報を、英語ではinclude という動詞自体が背負っています。
実務で一番危ないのはここです。方法セクションで「the dataset consists of images from three hospitals」と書いていながら、実は4つ目の病院のデータも含まれている場合、それは単なる言葉選びのミスではなく、事実と矛盾する記述として査読者に読まれます。全部を言い切る自信がないときは、機械的に include を選んでおくほうが安全です。
もう一つ、日本語話者が特に間違えやすいのが comprise です。consist は必ず of を伴いますが、comprise は of を取りません。「The committee comprises five members.」が正しく、「The committee comprises of five members.」は誤りです。日本語の「〜から」という助詞の感覚につられて、comprise にも of を付けたくなるのがこのミスの正体です。迷ったら、of が要るかどうかだけを確認してください。それだけで一つの誤りは確実になくなります。
生成AIに英訳や文章の手直しを頼むと、同じ語の繰り返しを避けて読みやすくしようとする傾向があり、前の段落では"consists of"、次の段落では"includes"、また別の場所では"is composed of"というように、意味の異なる語を無意識に使い分けてしまうことがあります。これは文章としての単調さを避けるという意味では合理的な振る舞いですが、この記事のテーマである「全部か一部か」という主張の中身そのものを、書き手が気づかないうちに変えてしまうリスクがあります。同じデータセットの説明が、ページによって"consists of"だったり"includes"だったりする原稿は、AIによる言い換えの跡である可能性を疑ってみてください。
提出前に原稿内の consist、comprise、compose、include を検索し、それぞれについて二つ確認してください。ofが必要な場所に付いているか。そして、そのリストは本当に全部か、それとも一部か。同じ対象を指しているのに語が変わっている箇所がないかもあわせて見てください。答えに詰まった箇所は、査読者に見つかる前に直す価値があります。
この種の近似語の使い分けは、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の近似語を扱う章(英語)で、他の混同しやすい語とあわせてより詳しく解説しています。
語彙の選び方一つひとつを原稿全体でチェックしてほしいという場合は、レベル3の英文校正で、構成や表現とあわせて確認できます。AIで英訳・手直しをした原稿で語の選び方に一貫性があるかを見直したい場合は、リライト編集のほうが、こうした主張レベルの矛盾まで踏み込んで確認できます。
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