日本語で読む:並列構造(前編)とは何か
日本語で「AとBを行った」と書くとき、AとBがどんな品詞・どんな形をしていても、特に問題は起きません。動詞と名詞を並べても、日本語の助詞「と」は気にせずつないでくれます。ところが英語で "and" が二つのものをつなぐとき、その両側は同じ文法的な形でなければなりません。共通の土台(stem)を見つけ、その土台に両方の枝(branch)を差し込んでみて、どちらも文として成立するかを確認する。これが、日本語にはない縛りを機械的に確認する方法です。
日本語の「て形」接続、たとえば「変異を同定し、その下流への影響を評価した」という文を考えてみてください。「同定し」も「評価した」も、日本語の文法としては何の違和感もなく並びます。ここには英語の parallel structure に相当する制約が働いていません。だからこそ、この感覚のまま英語に直訳すると "to characterize the mutation and evaluating its downstream effects" のように、不定詞(to + 原形)と動名詞(-ing)が無意識に混ざってしまいます。日本語側では起きなかった「形をそろえる」という作業を、英語では追加でやらなければならない。これがこの間違いの正体です。
Introductionの最後、研究目的を述べる一文でこの問題が特によく出ます。
誤り: "The aim of this study was to characterize the mutation and evaluating its downstream effects."
共通の土台は "The aim … was to…" です。"to characterize the mutation" はうまくはまりますが、"to evaluating its downstream effects" はそのままでは英文法として成立しません。両方を不定詞にそろえるだけで解決します。
正しい: "The aim of this study was to characterize the mutation and evaluate its downstream effects."
それぞれの部分だけを読むと自然に聞こえるからこそ、共通の土台に当てはめて初めて気づけるタイプの誤りです。
並列構造は "and" でつなぐリストだけの話ではありません。比較の文にも同じ縛りがあります。
誤り: "Our results were more consistent than the control group."
文字どおり読むと、「私たちの結果」と「対照群」という、種類の違うもの同士を比較していることになります。日本語の「対照群よりも一貫していた」という言い方では意識されない、この「比較の両側の種類をそろえる」という要求は、英語独自のものです。
正しい: "Our results were more consistent than those of the control group."
"those of" が、比較の両側を「結果と結果」という同じ種類にそろえる役目を果たしています。
生成AIに「この目的の文にもう一つ項目を足して」「この一文だけ表現を変えて」のように、リストや比較の一部だけを直すよう頼むと、並列構造がかえって崩れることがあります。AIは指示された箇所だけを書き換えることに集中しがちで、その結果、変更していない他の項目の文法的な形まで戻って確認するとは限らないためです。もともと "to characterize" と "to evaluate" で正しくそろっていた文に、あとから "and identifying its regulatory targets" のような項目を追加で足すと、最初の二つは不定詞のままなのに、新しく足した部分だけ動名詞になっている、というねじれが起きます。AIにリストへの追加や部分的な書き換えを頼んだあとは、必ずリスト全体、比較全体を通しで読み、この記事の一つのテスト(共通の土台に差し込めるか)をもう一度当てはめてください。
"and" でつながれた部分、"than" で比較されている部分を見つけたら、その手前にある共通の土台をもう一度読み、両側をそこに差し込んでみてください。どちらも自然な文として成立すれば合格です。片方だけおかしければ、形をそろえるだけで直ります。この確認は日本語のとき以上に、英語では意識的に行う必要がある作業だと考えておくとよいでしょう。
この種の一文単位の確認は、書いた本人よりも第三者のほうが気づきやすいものです。原稿全体をこの視点で見直してほしい場合は、英文校正サービスで、文法・構成とあわせて確認することができます。AIでリストの追加や部分的な書き換えをした原稿は、こうしたねじれがピンポイントで残っていることが多いため、リライト編集で全体を通して確認するほうが安心です。
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