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英語ライティングのコツ 15:略語はいつ定義すべきか

日本語で読む:略語はいつ定義すべきか

「SNS」は日本語の日常会話でもニュースでもごく普通に使われる言葉です。ところが、これをそのまま英語論文に "SNS" と書いて説明を省くと、英語圏の読者の多くには通じません。英語では "social media" が一般的で、"SNS"(social networking service)は和製英語に近い使われ方をしているためです。ある略語が日本語でどれだけ定着しているかと、その略語が国際的な英語の読者にも通じるかどうかは、まったく別の話です。これがこの記事の一番伝えたい点です。

「日本語で当たり前」が一番危ない

DNAやAI、ITのように、日本語でも英語でも同じ意味・同じ使われ方をしている略語であれば、迷う必要はありません。危ないのはむしろ、日本語の中で意味が独自に広がったり狭まったりしてしまった略語です。SNSはその代表例で、英語のsocial networking serviceという元の言葉よりも広い意味で日本語に定着しています。同様に、日本国内の機関名・制度名から作られた略語(たとえば特定の助成金制度や委員会の略称)も、日本の読者には自明でも、海外の査読者にとっては初めて見る文字列でしかありません。「自分にとって説明不要に感じるかどうか」を判断基準にすると、この種の略語を見落とします。

基本のテスト:使用回数と、すでに広く知られているか

その用語を論文内で一度しか使わないなら、略語化する必要はありません。一度きりの登場のために読者に略語を覚えさせるのは、単純に割に合わないコストです。三回以上使うなら、初出のときに正式名称とセットで定義し、以降はその略語で統一してください。ただし、DNAやPCR、MRIのように、正式名称よりも略語のほうが広く通用している場合は、律儀に正式名称を書き出す必要はありません。分野の慣習として定着しているかどうかは、投稿先ジャーナルの直近の掲載論文を数本確認すれば見当がつきます。

Abstractは独立した文書として扱う

Abstractは本文とは切り離されて、PubMedの一覧やGoogle Scholarのスニペット、学会プログラムなどで単独で読まれます。Introductionで定義した略語をAbstractでは無定義のまま使うと、Abstractだけを読んだ読者にとってはその定義が存在しないのと同じです。Abstractに略語が登場するなら、そこで改めて初出の定義を行ってください。本文とAbstractで同じ略語を二度定義することになりますが、これは冗長ではなく、それぞれが独立した文書として機能するための必要な重複です。

AIに書かせると、略語の定義が文書内でずれる

生成AIに原稿の一部を書かせたり、章ごとに分けて編集を依頼したりする場合、この「初出で定義し、以降は略語で統一する」というルールが崩れやすくなります。AIとのやり取りが章単位・段落単位で区切られていると、前の章でどの略語をどう定義したかという情報が、後の依頼には引き継がれないことがあるためです。結果として、同じ略語が本文の途中でもう一度正式名称から定義し直されていたり、逆に前の章で定義したはずの略語が、後の章では説明なしに使われていたりします。原稿全体を一度に生成・編集していない場合ほど、略語の初出箇所を検索して、定義が一度だけ、正しい場所にあるかを見直す価値があります。

投稿先の慣習は自分で確認する

定義なしで使ってよい略語の一覧を、著者向けガイドラインや別紙のスタイルガイドに用意しているジャーナルもあります。何も明記していないジャーナルもあり、その場合は分野の慣習に委ねられます。いずれにしても、この記事のような一般的な解説では断定できない部分なので、投稿先の「Instructions for Authors」で「abbreviation」または「acronym」を検索し、10分ほどかけて確認することをおすすめします。

略語の定義タイミングについては、University English Hubの解説動画(英語)も参考になります。

略語の扱い方は、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の該当章(英語)でも扱っています。

日本語では自明でも国際読者には通じない略語がないか、AbstractとIntroductionの定義が食い違っていないかは、自分では見落としやすいポイントです。レベル3の英文校正では、こうした一貫性の確認を文法・構成の確認とあわせて行います。章ごとにAIで書かせた原稿で略語の定義がずれていないか確認したい場合は、リライト編集のほうが、文書全体を通した整合性まで見直せます。

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