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英語ライティングのコツ 14:確信度・根拠・引用の示し方

日本語で読む:確信度・根拠・引用の示し方

「〜かもしれない」「〜と考えられなくもない」。日本語の論文やメールで、こうした控えめな言い回しを使うのは、礼儀正しさの表れであり、むしろ好印象につながります。ところが同じ態度を英語でそのまま再現すると、査読者には「自分の結果に自信がないのだろうか」という、まったく逆の印象を与えてしまいます。英語の学術文章では、証拠の強さちょうど分だけ自信を示す必要があります。謙遜のために証拠より弱く書くことも、達成感のために証拠より強く書くことも、どちらも同じくらい問題視されます。

謙遜の文化がそのまま裏目に出る

日本語には、断定を避けて相手に判断の余地を残すという、対人関係の作法があります。これは学術的な誠実さの表現でもあり、悪いことではありません。ただし、英語の学術コミュニティ、とくに査読者は、この控えめさを「不確実性のシグナル」としてそのまま受け取ります。"the results may possibly suggest a potential trend" のような文を見た査読者は、著者の礼儀正しさではなく、「このデータに何か問題があるのでは」という懸念を読み取ります。日本語の感覚を持ち込んだまま英語を書くと、意図とは逆の下方修正が自動的にかかってしまうのです。

逆方向、つまり自信を出しすぎて "this proves that X causes Y" のように言い切ってしまうケースは、日本語話者にはむしろ少ない傾向があります。日本語の感覚のまま英語を書くと、統計的には十分な証拠があっても、実際より弱く聞こえる文になりがちだということを、まず知っておく価値があります。

テスト:その引用は主張に見合っているか

引用は文末に添える飾りではなく、主張を支える証拠そのものです。単発の研究、狭い範囲でしか確認されていない結果を根拠にするなら、控えめに書くのが正しい判断です。逆に、分野の中で何度も再現されている知見であれば、事実として言い切り、"clearly" や "undoubtedly" のような強調語を足す必要はありません。引用そのものがすでに十分な重みを持っているからです。

報告動詞と、動詞を使わない言い切り方

報告動詞を使う場合。"show"、"demonstrate"、"report"、"found" は、誰がその知見を出したのかを明示します。能動態のほうが受動態よりはっきりします。"Terahara et al. found that transcription factor Spi-B is specifically expressed by M cells (2008)" は誰の主張かが明確です。"it has been found that Spi-B is expressed" のように受動態にして主語を消してしまうと、査読者は「誰の責任における主張なのか」が見えなくなり、かえって警戒します。

動詞なしで事実として言い切る場合。分野で確立した知見であれば、"M cells transport antigens across the intestinal epithelium (Neutra et al., 2001)" のように、動詞を使わず事実として述べ、確からしさの担保は引用に任せます。"it has been reported that" を頭に付けても、言葉数が増えるだけで確からしさは増えません。

あえて不確かさを残すべき文もある

弱い結果を裏付けたいとき、先行研究と食い違う結果が出たとき、分野に未解決の論争があるときは、不確かさをそのまま書くのが正直な態度です。"in contrast to Smith et al. (2019), we found…" のように、対立をぼかさず示してください。大切なのは、証拠が実際に弱いから控えめに書くのか、それとも日本語からの癖でなんとなく控えめにしているだけなのかを、自分で見分けることです。後者のヘッジ表現は、削っても失うものがありません。

AIも独自にヘッジしたがる、という二重の要因

日本語の控えめな書き方をAI翻訳ツールで英語にする場合、事情はさらに一段階複雑になります。生成AIはそもそも、誤った情報を断定的に伝えることを避けるよう訓練されている性質上、"may"、"could"、"it is possible that" のような控えめな表現を自発的に選びやすい傾向があります。つまり、日本語側の謙遜の癖と、AI側の独自のヘッジ癖という、二つの別々の理由から来る控えめさが一つの文の中で重なってしまうことがあります。これは、冗長さを扱った別記事で触れた「〜と考えられる」の二重ヘッジ現象と根は同じで、原因が一つ増えたと考えると分かりやすいはずです。もう一点、AIが生成した文が、実在しない、あるいは実際の内容と微妙にずれた引用を、いかにも確からしい形で添えてしまうことも知られています。断定するにせよ控えめにするにせよ、その根拠となる引用が本当にその主張を支えているかどうかは、AIが書いたか人間が書いたかに関わらず、最終的には人の目で確認する必要があります。

自信の土台になる引用は、正確でなければならない

断定するにせよ控えめにするにせよ、その根拠となる引用が正確でなければ意味がありません。年の不一致、主張と噛み合っていない引用、本文と参考文献リストの不一致は、査読者が最も見つけやすく、最も擁護しにくい種類のミスです。Uni-editの参考文献・引用チェックサービスは、この確認だけを専門に行うサービスで、文章の英語自体を見る作業とは切り離して依頼できます。

ヘッジ表現と報告動詞のバランスを、原稿全体を通して見直すのは、一文ずつではなく議論全体を読む必要がある作業です。これはアカデミック英文校正レベル3が担う領域で、証拠に対して主張が強すぎないか、弱すぎないかを、言語面とあわせて確認します。AIで下書きや翻訳をした原稿で、日本語由来の控えめさとAI由来の控えめさが重なっていないか確認したい場合は、アカデミック英文校正リライトのほうが、構成レベルから踏み込んで見直せます。

この考え方は、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の国際発信力を扱う章(英語)でも、より多くの実例とともに扱っています。

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