日本語で読む:長い列挙にはセミコロンを
共著者の所属先を英語で書き並べたら、なぜか読みにくい文になってしまった。共同研究が多い日本の研究者なら、一度はこの壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。原因はほとんどの場合、コンマだけでリストをつないでいることにあります。解決策はシンプルで、各所属の中にすでにコンマが入っている場合は、所属と所属の間をセミコロン(;)でつなぐという一点だけです。
日本語にはこの発想がそもそもありません。日本語で並列を示すときは「・」(中黒)や「、」を使いますが、英語のセミコロンのように「大きめのコンマ」として機能する記号は日本語の句読点にはないからです。だからこそ、文法的には知っていても、いざ書くときに自然に出てこないというのが正直なところではないでしょうか。
複数の大学・研究機関が関わる共著論文で、著者所属をコンマだけで書くとこうなります。
Department of Chemistry, University of Tokyo, Tokyo, Japan, Department of Physics, Kyoto University, Kyoto, Japan, and Graduate School of Engineering, Osaka University, Osaka, Japan.
コンマの数を数えてみてください。「機関名」と「都市名」を区切るコンマなのか、「一つの所属」と「次の所属」を区切るコンマなのか、読者には見分けがつきません。これは日本の大学が「学部・研究科、大学名、市、国」という長い所属表記を持つために、まさに起こりやすい事故です。セミコロンに置き換えると一目で解決します。
Department of Chemistry, University of Tokyo, Tokyo, Japan; Department of Physics, Kyoto University, Kyoto, Japan; and Graduate School of Engineering, Osaka University, Osaka, Japan.
セミコロンが所属と所属の境界を示すので、コンマは所属の内部だけの、より小さな仕事に戻れます。査読者やジャーナルの編集部は、こうした一文だけでも著者が英語表記に慣れているかどうかを判断材料にすることがあります。
結果セクションで複数群のデータを一文にまとめるときも、同じ衝突が起きます。
The scores were 70 in the first group, 60 in the second, and 40 in the third.
これくらいなら読めますが、群の数が増えたり、それぞれの数値に単位や条件が付いたりすると、途端に読みにくくなります。セミコロンで区切れば、群が何個あっても構造は崩れません。
The scores were 70 in the first group; 60 in the second; and 40 in the third.
ルールは一つだけです。リストの中の一つでも項目の内部にコンマがあれば、項目と項目の間はすべてセミコロンに格上げする。内部にコンマがない、単純な単語の羅列("apples, pears, and bananas" のようなもの)にセミコロンを使う必要はありません。「フォーマルに見えるから」という理由でセミコロンを増やす書き方は、逆に不自然な印象を与えるので避けてください。
動きのある例で確認したい方は、University English Hub のセミコロン解説動画(英語)も参考になります。字幕なしの英語ですが、今回と同じ2つの例をそのまま扱っているので、耳で確認したい方には向いています。
こうした句読点の使い方は、自分では気づきにくいものです。所属リストや結果セクションの一文単位まで見てほしいという場合は、レベル3の英文校正で、文法や表現とあわせて確認することができます。
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