日本語では「統計的に有意な差」と「重要な知見」は、最初から別の言葉です。「有意」はp値の話、「重要」は価値判断の話だと、単語を見ただけで区別がつきます。ところが英語になると、この二つがどちらも同じ一語 significant にまとまってしまいます。英語のsignificantを統計の意味だけに残し、それ以外の「重要」にはsubstantial・considerable・notableなどを使う。これが結論です。
一見すると不思議に思えるかもしれません。日本語では区別できているのに、なぜ英語で混ざるのか。理由は、英語のsignificantという単語を「有意」の訳語として先に覚えるケースが多いためです。統計の授業や論文でstatistically significantという形で出会い、そのまま「significant = 有意」という一対一対応で記憶してしまうと、いざ「この結果は重要だ」と英語で言いたくなったときに、手持ちの語彙からいちばん自信のある単語としてsignificantを選んでしまいます。日本語では別の単語を使い分けているのに、英語の語彙の引き出しが浅いために、かえって英語のほうで意味が一つに収束してしまうという、逆転現象が起きているわけです。
統計的なsignificantは、比較・検定・閾値の三点セットが背後にあって初めて成立する専門用語です。
"There was a statistically significant difference between the experiment and control groups (P<0.05), leading us to reject our null hypothesis."
この意味で使うsignificantには、必ずstatisticallyという語を添えてください。数字が本文になくても、表を参照する形で構いません。とにかく「これは検定の話だ」と明示することが目的です。
もう一つ、日本語の感覚がむしろ助けになる点があります。サンプルサイズが十分に大きければ、実質的には無視できるほど小さな差でもP<0.05をクリアしてしまいます。1万人規模の調査での0.3%の変化は、統計的にはsignificantでも、実務的にはほとんど意味がないかもしれません。日本語では「有意だが重要とは言えない」と自然に書き分けられるこの区別を、英語でも同じように保ってください。効果量が小さいなら、その旨を明記し、p値だけに語らせないことが大切です。
第1段落で統計的に有意な結果を報告し、第3段落で「these are significant findings for the field」と書いてしまうと、査読者は「これは統計の話なのか、それとも単に重要だと言いたいだけなのか」と立ち止まります。後者のつもりなら、importantやnotableに置き換えるだけで、この曖昧さはただで解消できます。
生成AIに日本語の原稿を英訳・要約させると、「重要」「顕著」「注目すべき」といった、日本語では書き分けられていたニュアンスの違う語が、英語側ではまとめてsignificantに寄せられてしまうことがあります。significantは統計とも日常語とも相性がよく、AIにとって「無難で当たり障りのない強調語」として選ばれやすいためです。結果として、統計的に有意な結果を述べた段落と、単に注目してほしい結果を述べた段落の両方に、同じsignificantという語が並ぶ原稿ができあがります。AIが訳した、あるいは手直しした原稿ほど、この一語を狙って検索し、統計の話かどうかを一つずつ確認する価値があります。
検定の話をするときは、必ずstatisticallyとsignificantをセットで使う。それ以外の場面では、significantではなくsubstantial、considerable、notableのどれかを選ぶ。この一点だけを習慣にすれば、日本語ではもともと区別できていた二つの意味を、英語でも同じように保つことができます。
この種の「英語では一語にまとまってしまうが、日本語では区別されている」語彙は他にもあります。原稿全体でこうした語の選び方を確認してほしい場合は、アカデミック英文校正で、文法や構成とあわせて見てもらうことができます。AIで英訳・要約した原稿でこうした語のすり替わりがないか確認したい場合は、リライト編集のほうが向いています。近似語をまとめて扱った章が、Uni-editの英語版書籍「How to Fix Your Academic English and Publish Your Research Faster」の該当章(英語)にもあります。
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