lingua franca(リンガフランカ)という言葉を聞いたことがありますか。それはラテン語ですが、英語でも使います。ラテン語で文字通りには「フランス語」という意味です。今日では「言語の異なる人々の間で話される共通語」という意味で使用します。18世紀にはフランス語が国際的に使用された言語であったことがこの言葉の由来です。
現在では、英語が国際的なlingua francaです。英語の他に例を見ない特徴は、世界中でネイティブスピーカーよりもノンネイティブ・スピーカーのほうが多いということです。英語が字義通りでは「フランス語」になってしまったことは皮肉なことです。英語は世界を統合しますが、地域によってバリエーションが存在することを認識しておかなければなりません。
アメリカ(US)英語とイギリス(UK)英語は、文書英語と口語英語で最も一般的な2つの系統です。アメリカ英語は、米国の英語です。イギリス英語は、英国の英語です。イギリス連邦の多くの国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)は、最初は英国英語を支持していましたが、その後各国特有のスペルとスタイルに変化しています。オーストラリア英語は英国英語と非常に似ていますが、少数の単語(たとえば、"enquire"の代わりに"inquire")は米国式スペルを許容しています。カナダ英語は多くの単語は英国式スペルを保持していますが、米国式スペルも地理的に近いためによくみられます。
例1(米国):We inquired whether participants were taking estrogen supplementation.
(我々は参加者がエストロゲン補充を受けているかどうかを調べた。)
例2(英国):We enquired whether participants were taking oestrogen supplementation.
例3(オーストラリア):We inquired whether participants were taking oestrogen supplementation.
例4(カナダ):We enquired whether participants were taking estrogen supplementation.
文書の英語で最も顕著な違いがあるのは、句読点とスペルです。学術誌から論文の著者に対し共通して指摘されることは、「米国英語と英国英語のいずれを使用しても良いが、混合してはならない」ということです。「アカデミックスタイルの英語」がますます一般的になってきており、基本的に著者は自分の好む系統を選ばなければなりません。学会誌によって規定が異なるので、論文原稿を校正し提出する前に各学会誌の投稿規定を確認し、適切な英語システムを決定する必要があります。
例1:(Natureの出版物)Oxford UK English spelling.(Oxford英国式スペル)
http://www.nature.com/ncomms/authors/submit.html
例2:(IEEEの出版物)Change all British spellings to American spellings where applicable.(必要に応じ、すべての英国式スペルを米国式スペルに変更する。)
http://www.ieee.org/about/webteam/styleguide/mainsite_content.html
例3:(例えばJournal of Endocrinology) Manuscripts can be written in either UK or US English.(原稿は英国英語または米国英語のどちらでも良い。)
http://joe.endocrinology-journals.org/site/misc/For-Authors.xhtml
たいていの国際的出版物には米国式のスペルと文法を選択するのが無難です。英国に拠点を置く出版社(例えば、Oxford University Press)は、通常、英国式スペルを好みます。カナダやオーストラリアの現地の出版物は、自国バージョンの英語に準拠することがあります。たとえば、オーストラリアの大学で論文を書いている場合、オーストラリア英語を使用するのが賢明です。
学会誌がスペルの系統を指定しない場合、米国式または英国式のスペルを推奨します。
最後に、ネイティブ・スピーカーはとかく英語の系統の違いを重視しがちであり、英国は英語の起源の国であるので英国英語こそが「正当な」英語であるとか、米国英語は世界的に広がっているので米国英語を学ぶのが最も良いとか言うものです。しかし、グローバル化した世界では、これらの多くは意義よりもむしろ文化的なアイデンティティの違いに相当します。賢明な著者はそのような安易な判断を超越して、投稿する学会誌の英語の各系統に習熟することです。